『精神認知とOT』(2006年6月、青海社)より

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 私事ですが,昨年(2005年)9月に13年間勤務した行政の職を辞し,専門学校の教官となりました.

 この間、小児の早期療育事業,精神障害者授産施設,老人保健事業,介護保険事業などに携わってきましたが、好むと好まぎるとにかかわらず,職場の異動があり,それぞれの事業への“思い入れ”が分断される経験をしてきました.

 今回紹介する本は,「自分の力ではどうしようもない」と思われる「魅力的な理想」に「一歩ずつ粘り強くアクションを続けていく」(引用),その過程と成果が記録されているといえます.

 編著者である「カイパパ」さんとは,自閉症の男の子「開」君のパぺ「カイパパ通信」というプログの管理運営者です.「カイパパ」さんは,このプログを通じてつくりあげたコミュニティを利用して,発達障害者支援法成立キャンペーンを行いました.「体温のある肉声を届けよう」と呼びかけ.保護者・本人・支援者などの声120件をまとめて国会に届け,議員立法であるこの法案の成立を支援しました.紹介されている「声」には,自閉症など理解されにくい障害を抱えた親の苦悩や願いが善かれており,強く心を打たれます.若い方たちにとっては,障害者支援の基本的な考え方を学ぶことができると思います.

 そして,「カイパパ」さんは,この法律に魂を入れるべく奮闘します.理念や基本的な考え方がどれほどにすばらしくても,それはいわば形です.具体的な施策として,住民が見える形で実現されて初めて法律に魂が入ることになります.本書では「マイ施策提案会議のススメ」として,具体的な会議のもち方やテーマの設定方法,学習の内容などが示され,問題点を共有し自分たちに必要なサービスを具体化する過程が紹介されています.例として,名古屋市での発達障害者支援センター設置の要請に関する取り組みの実践が載っていますが,ここで感心させられたことは,当事者団体として行政と手を組み,パートナーとして,階段を一歩ずつ昇るように活動されていることです.

 専門職として当事者と共に歩み,互いにエンパワーメントし,さまざまなバリアーを克服していくときの新たな手法をみせられたように思います.地域全体がノーマライゼーションの視点に立った障害者支援を目指している流れの中で,教育分野での「インテグレーション」は社会全体の「インクルージョン」へと,その理念が広がっています.

 障害者自立支援法も施行され,地域の特性に応じ,地域に生活する方々を主体としたサービス捷僕が求められています.まさにソーシャルインテグレーションの視点での事業展開が求められる中,行政の外からも地域を支援することができることを実感きせられた一冊です.

 

 小市健二〔長野医療技術専門学軌作業療法士〕