ホーム | 書籍一覧 | ご注文方法 | 書店一覧 | リンク

 

学習障害の子 救って

 先生に読んで欲しい 自身の体験つづり出版

日本海新聞 2012年2月15日(井上広志)

 

 学章習障害の一つ「ディスレクシア」を抱える伯書町金屋谷の建築業、井上智さん(49)が、読み書きができないために勉強を放棄せざるを得なかった自身のこれまでをまとめた本『読めなくても、書けなくても、勉強したい』が1月、ぶどう社(東京都千代田区)から出版された。本に込めた思いは「同じ障害を抱える今の子どもたちを救いたい」−。障害への理解が進み、ハンディがある子どもに合わせた学習の普及を願って「特に教育関係者に読んでほしい」と話している。ディスレクシアは、脳の一部の機能不全によって読んだり書いたりが難しい障害。困難さにはさまざまあるが、井上さんの場合は文字とその音を一致させることが難しく、特に漢字の読み書きをすることが、・他人が想像するよりはるかに難しい。

 井上さんは小学生からずっと障害による生きにくさを感じてきた。小学生になると自、分の名前は書けるまうになるのが当たり前という雰囲気の中、自分だけはどう頑張っても書けない勺授業中に本の音読がうまくできない。一方で、知的に問題はないため几教師からは「怠けている」と見られ、周囲の風当たりは厳しかった。始業のあいさつの後すぐに教師に「お前は後ろで立ってろ」と言われ、授業に加えてすらもーりえなかったことは今でも鮮明に覚えている。

 働き出してからも字が書けないことはいろいろな場面で井上さんの前に立ちはだかり、字が書けないことをごまかすために手のけがを装う傷テープをポケットに忍ばせていた。

 転機は43歳で教育ジャーナリスト、品川裕香さんの著書『怠けてなんかない!』と出会ったことから訪れた。「これは俺のことだ」−。情報を集め、診断で自分がディスレクシアと知った。

 「知った時は、これまで読み書きできなくてあきらめてきた思いが多すぎて、落ち込んだ」と井上さん。妻から「障害で勉強をあきらめた体験こそ、他の人のために磯立てられる」との助言を受け、ホームページで体験を紹介するとともに出版の話が持ち上がり、妻の協力で文章にまとめるなどして本が完成した。

 本では、学校や社会に出てからの生活で感じたこと、気持ちが落ち着いた現在の生活に至る経緯などを読みやすく書いた。「特に学校の先生に読んでほしい。今、目の前で学習障害に苦しんでいる子どもたちを救ってほしくて」と強調する。