愛情深く結ばれる手助けに
精神障害者の家族が体験記
「心を病む人と生きる家族」出版
鳥取県内などに住む心の病と闘っている人たちの家族が、発病した子どもや妻と共に生活する様子などを率直につづった「心を病む人と生きる家族」(ぶどう社)が出版された。編著者は同じ病気と向き合う南部町高姫の主婦、古川奈都子さん(三四)で、「精神障害のある人とその家族がより愛情深く結ばれる手助けになれば」と話している。
古川さんは高校生の時に発病し、美術教師の夫の協力を得ながら精神障害者の自助グループ「柊(ひいらぎ)の会」の代表として活動。自らの闘病や仲間の体験をまとめた著作に続く三冊目で、今回は古川さんと交流のある家族に執筆を呼び掛けた。
掲載したのは、県内をはじめ関東や関西などの十四家族と古川さんの体験。妻や息子などの発病時のショックや不安、共に生活するかっとう、周囲の無理解などが飾りのない言葉で書かれている。
結婚十八年目の夫は、妻が二人の子どもを産んだ後、統合失調症で入院。育児の苦難を乗り越え、「愛情表現が足りなかった」と気付き前向きに生きる。二十年前に発病した息子と暮らす七十四歳の父親は「家族として最も大切なことは、病気についてよく勉強すること」ととらえ、四十四歳の長男が統合失調症の母親は「障害を隠さず胸を張って堂々と暮らせる社会にしたい」と語る。
精神障害は特別の病気ではない。誰でもかかる可能性がある。古川さんは「社会の誤解や偏見に苦しみながら、心の病のある人に愛情を注ぐ家族の姿が読み取れるでしょう。障害者本人は家族から疎まれていると勘違いすることが多いので、その溝に気付いて強いきずなで結ばれてほしい」と話している。
2006年7月12日、日本海新聞より